アイスの本棚

読んだ本、観た映画の感想を書きます。

『ジュリアン』監督 グザビエ・ルグラン 2019年1月

 

映画『ジュリアン』を観た。
 
暴力を振るう父親から逃げるジュリアン一家の様子がとてもリアルに描かれていた。
夫婦としては離婚したけど、主人公のジュリアンだけは成人ではないという理由から隔週末に父親と過ごすことになる。ジュリアンとしては父親を母から遠ざけるために奮闘するのだけれど、そのかいもなく父親はジュリアン一家に近づいてくる。
中でも印象的だったのはジュリアンの姉の結婚式。嬉しいはずなのに楽しいはずなのに、父親の影に怯えてジュリアン一家は心から喜ぶことができない。そんな心境を表情豊かに表現していて見事だと思った。
 
もう一つ印象的だったのは、観ているこちらにもストレスが溜まるということ。にじり寄ってくる父親の恐怖と、それがいつまで続くのか分からない恐怖。映画で観ているだけでこのストレスなのだから、実際に同じような目あったら私は耐えられないなと思った。
映画だからもちろん終わりはあるのだけど、父親による恐怖が終わったからと言って安堵できるわけでもないし、嬉しいと感じるわけでもない。ただただ恐かったという思いだけが残る。恐怖によってつけられた心の傷だけが残る。
この映画の父親のような人は、きっといつの時代になってもいなくならないと思う。そういう人によって傷つく人を一人でも少なくできる世の中になったら良いなと思う。